新卒の離職率は3割近くあると言われており、辞めていく新卒者は誰しもが同じような理由で会社を退職をしています。
新卒者を採用するまでには、多くの手間ヒマ掛けて時間とコストを費やしているため、3人中1人が辞めていく日本の実態は非常に勿体ないと言えるでしょう。
今回の記事では、新卒者が何故こんなにも離職してしまうのか主な理由の解説を行い、合わせて離職率を下げるためにはどうすれば良いのかをまとめています。
今後の新規採用・人材育成の参考になれば幸いです。
新卒の離職率ってどのくらい?
新卒として入社後に辞めてしまう人は数多く、毎年一定の割合で退職者が現れます。
新卒の離職率を厚生労働省は「新規学卒者の離職状況」という調査結果を公表しており、入社から3年以内で退職した割合が、中卒で約5割、高卒で約4割、大卒で約3割もの離職率があると発表しています。
新卒者の3人に1人以上が3年以内に退職している実態には驚きでしょう。
そもそも離職率とは
離職率とは、「ある時点で働いていた人数のうち、一定期間後に退職した人の割合」を表します。
新卒の離職率は入社後3年間を基準とする場合が多く、「3年後離職率」と業界では言われることも。
厚生労働省が公表している「新規学卒者の離職状況」では、入社後1年目・2年目・3年目全ての期間で数値が算出されていますので参考になることでしょう。
学歴別就職後3年以内離職率の推移
新規学卒者の離職状況
グラフを見ても分かるように1年目の離職率が突出しています。
新卒の離職率が高い業界
新卒の離職率が高い業界はサービス業や教育業と言われています。
サポネットの情報によると
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、新卒3年以内の離職率がもっとも高い産業は宿泊業・飲食サービス業です。大学卒の離職率が51.5%で、半数以上が退職しています。大学卒の離職率が高い順にみると、生活関連サービス業・娯楽業が46.5%、教育・学習支援業が45.6%と続きます。
サポネット
このような記載がされており、3年以内に半数以上もの新卒者が離職している事が読み取れます。
その他にも離職率の高い業界をまとめると
- 宿泊・飲食サービス業
- 生活関連サービス・娯楽業
- 教育・学生支援業
- 医療・福祉
- 小売業
サービス業たけでなく、医療系や小売業も高い離職率にある事が分かりました。
新卒が離職する理由
多くの新卒者が離職してしまうのには様々な理由があります。
どのような理由により退職を検討してしまうのか確認していきましょう。
□新卒が離職する理由
- 思っていた仕事と違った
- ノルマのストレスに耐えられなくなる
- 人間関係で悩み耐えられなくなる
- 労働環境に不満を感じるようになる
- 給料に不満を感じるようになる
思っていた仕事と違った
入社前に調べていた業務内容と、入社後に行う業務内容が異なる事例は珍しくありません。
事務職や受付を想像していたのに、気づけば営業の仕事を担当していた。
会社の内勤と聞いていたのに、現場で販売業をすることになった。
思っていた仕事と現実の大きなギャップに不満を感じて、新卒者が離職するのは典型的な事例と言えます。
ノルマのストレスに耐えられなくなる
入社後の一定期間は仕事を覚える必要がありますので、研修期間としてノルマを課せられたり、売上などのプレッシャーを掛けられることは基本的にありません。
研修期間を終えて、1人でも仕事をこなせるようになると上司からノルマを設定されたり、業績のランキングを意識させられることでしょう。
営業職や販売業に多い特徴と言えるのですが、同僚と比較される職場、ノルマに対するプレッシャーのある環境だと、精神的に耐えられなくなり離職してしまうことは良くあります。
人間関係で悩み耐えられなくなる
職場内の人間関係に大きなストレスを抱えて離職する新卒者も多くいらっしゃいます。
新卒者は社内で最も立場の弱いポジションになりますので、先輩や上司に逆らうことはできませんし、思っている意見を言うのも難しいでしょう。
パワハラ気質な先輩がいたり、嫌がらせをしてくる同僚、しつこくプライベートに介入してくる上司などがいると、楽しい仕事でも「辞めたい」と感じるようになってしまいます。
とくに人間関係の悩みは、仕事を辞める理由のランキング上位へと常に入り込む問題なので軽視することはできません。
労働環境に不満を感じるようになる
就労時間は10時~19時までと聞いていたのに、いつの間にか20時過ぎまで働くのが当たり前になっていた。
さらに残業をしても「みなし残業」によって給料が増える訳でもない。
他にも、最新のシステムを導入していないことによりアナログな手法で業務を行う時代遅れな会社と気づいた時。
劣悪な環境、不衛生な職場に嫌気が差した。
働き始めは仕事を覚えるのに精一杯ですが、冷静に周りが見えてくるようになると、おかしな労働環境に不満を感じるようになってきます。
世間一般的に違和感を感じてしまう労働環境は、必ず従業員の不満に繋がりますので、企業はクリーンな職場作りを心掛ける必要があるでしょう。
給料に不満を感じるようになる
同期よりも結果を出しているのに同じ金額の給料しかもらえない。先輩上司よりも働いているのに正当な評価をされていない。
このような人事評価や昇給制度に不満を抱き始めると、このまま仕事を続けて大丈夫なのか?と将来性を不安視するようになります。
また、周囲の人達や同年代の給料を比較するようになり給料の高い仕事へと転職を検討する新卒者も現れます。
新卒が離職すると生じる問題
新卒者が離職することで生じる問題は、企業としても、新卒者も事前に把握しておく必要があります。
退職してしまってから後悔しても遅いので、どのような問題が生じるのかを確認して、早めの対策を心掛けるようにしましょう。
企業側の視点と、新卒者側の視点それぞれで記載していますので参考にしてください。
企業から見た新卒離職による問題
先ずは企業側に生じる問題からです。
□企業から見た新卒離職による問題
- 新卒に費やした時間コストが無駄になる
- 社員のモチベーション低下に繋がる
- 企業の印象が悪くなる
新卒に費やした時間コストが無駄になる
新卒採用には時間とコストを要することになり、1人採用するのに平均70万~80万円のコストが掛かってると言われています。
企業説明会を行ったり、面接する面接官を決めたりと多くの時間を要することにもなります。
せっかく入社した新卒社員が離職してしまうと全てが無駄になってしまうことでしょう。
社員のモチベーション低下に繋がる
新入社員の入社は職場に新しい雰囲気をもたらしてくれるため、既存の社員達にも良い影響を与えてくれます。
しかし、この考えは逆も然りで新入社員が離職すると「せっかく仕事を教えたのに…」「自分達のせいかな?」「やっぱりこの会社は…」と既存社員のモチベーション低下に繋がるリスクも有り得るでしょう。
社内でのコミュニケーションは確かに大切ですが、プライベートまで介入する過度なコミュニケーションや、熱血すぎる指導は控えるのをオススメします。
企業の印象が悪くなる
離職者が多い企業は「働きにくい会社」というイメージが、口コミやSNSで拡散される可能性があります。
情報社会と言われる現代では、このような情報が発信されると一瞬で広まってしまうリスクがありますので、求人募集をしても応募者が集まらくなったり、既存社員として働いている従業員にも不安を与えてしまうことでしょう。
新卒者が離職してしまうのには必ず原因がありますので、早期的に原因を追求し改善する必要がある訳です。
離職で新卒者本人に生じる問題
離職することで新卒者本人に生じる問題を確認してみましょう。
□離職で新卒者本人に生じる問題
- 転職活動で不利になる可能性あり
- 生活費の余裕がなくなる
- 入社1年未満だと失業保険が貰えない
転職活動で不利になる可能性あり
新入社員として入社したものの短期的に転職活動を行う場合、「仕事が続かない人間」と企業から見られる可能性があります。
社会人として1回目の転職活動なら「会社の環境が合わなかった」「言われていた業務内容と違った」このような理由で、転職先も納得すると思いますが
新卒から3年以内に、2回目・3回目と転職してしまうと、企業からは相手にされなくなってしまうでしょう。
生活費の余裕がなくなる
新卒なら実家暮らしの方も多いと思いますが、一人暮らしをスタートしていたり、誰かを養わないといけない立場なら「収入」がないと生活出来なくなってしまいます。
離職は収入がなくなることを意味しますので、生活費の余裕が無くなり不安を感じる事になるでしょう。
入社して2~3年目くらいになると、退職する前に転職先を決めておくと言った行動が出来るようになりますが、入社1年目は過度なストレスにより急な退社をする方が多いので要注意です。
入社1年未満だと失業保険が貰えない
仕事を辞めたら「失業保険」を支給してもらえると考える人もいるようですが、自己都合による入社1年未満の離職は支給の対象外になる事が一般的です。
貰えると思っていたものが貰えなくなると、焦ってしまい何をしでかすか分かりません。
次の仕事探しも冷静な判断が出来なくなり、ご自身に合わない職場を選んでしまうリスクが高まりますので気をつけるようにしましょう。
新卒の離職を防ぐ方法
新卒者が離職してしまうことに危機感を感じたなら、今すぐにでも離職を防ぐ方法を実施するようにしてください。
新卒の離職を防ぐことは、中堅社員やその他の関係者の離職を防止する結果にも繋がります。
若手のために…と安易に捉えることなく、企業としての将来性にも関わってきますので紳士に向き合うようにしましょう。
□新卒の離職を防ぐ方法
- 社内コミュニケーションを改善する
- 採用時のミスマッチを防ぐ
- 柔軟な働き方に対応していく
- 定期的なフォローを実施する
社内コミュニケーションを改善する
新入社員は最も下っ端のポジションとなるため、気づいた事があっても意見をしにくかったり、萎縮してしまい悩みがあっても相談できずにいる社員もいらっしゃいます。
質問や相談がしにくい職場だと、仕事の連携が上手くいかない状況や、ミスが多発する原因にもなりかねません。
意見交換や相談をしやすい雰囲気作りはもちろんのこと、先輩や上司から優しくコミュニケーションを図るのも新卒者の離職を防ぐ効果的な方法となるでしょう。
採用時のミスマッチを防ぐ
求職者に対して必要な情報を伝えきれていないと、入社後に話が違うとミスマッチが発生しやすくなります。
入社前に「社風や業務内容」は明確に伝えるよう心掛け、企業説明会では職場の雰囲気を感じさせておくのも重要なポイントになります。
また採用後の人材育成において、インターンシップやOJTを接客的に導入することで離職の防止に繋がります。
柔軟な働き方に対応していく
多様化の進む現代において、決まった業務しか出来ない、就業規則が昔から変わらない環境は社員の不満を募らせる一方となります。
テレワークやフレックス制の導入、育児や介護などに関する福利厚生の充実は社員の離職を防ぐ効果的な対策となるでしょう。
部署が複数あるにもかかわらず、営業が嫌いな社員に営業部署で働かせたり、新しいことにチャレンジしたいと考えている社員を同じ部署で働かせ続けるなどはナンセンス。
企業の人事担当は適材適所な対応を意識することが求められます。
定期的なフォローを実施する
企業として相談しやすい職場作りや、積極的なコミュニケーションを意識しても、だからと言って新入社員からすれば不安や悩みを打ち明けれるとは限りません。
個人間での定期的なフォローは必要不可欠で、1対1での面談、メンター制度を活用することにより新卒者が抱えている不満や、将来のキャリア設計を具体的に把握できるようになります。
注意点として
このような面談形式のフォローを実施する際は、緊張させない環境作りを徹底すること。
面談の内容が評価対象にならないことを事前に共有しておく必要があるでしょう。
新入社員が萎縮するような面談になってしまうと、本心を打ち明けてくれないどころか、定期的な面談がストレスとなり離職する要因になることも有り得ます。
まとめ
新卒者の離職率が高いのは仕方ないことでもありますが、新卒が離職してしまう理由をしっかりと理解できれば企業として防止策を検討出来ます。
採用におけるミスマッチの抑制、入社後の充実した研修やOJT、定期的なフォローなど対策できる方法はたくさんあるでしょう。
新卒者の目線としては、会社で1番下っ端のポジションとなるため、言いたいことがあっても思うように伝えられず、人間関係で悩む場合もあるでしょう。
だからと言って簡単に離職してしまっては「転職活動で不利」になってしまったり、「生活費が無くなるリスク」もあげられますので退職する前に、転職するメリット・デメリットを把握してから行動を取るようにしてください。
次の仕事が決まっていないのに仕事を辞めたいと感じている場合は、下記の記事にてメリットやリスクを解説していますので合わせて参考にするといいでしょう。以上
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