今となっては多くの企業が研修制度に導入している「OJT」ですが、OJTを実施するには新入社員に教育・指導を行う「OJTトレーナー」の選出が必要不可欠です。
OJTトレーナーに向いていない人を選出してしまうと、OJTが意味の無い研修になってしまうどころか、新入社員を不安にさせたり過度なストレスを与えてしまい入社早々に退職者を出してしまう可能性も有り得るでしょう。
今回は「OJTトレーナーに向いてない人の特徴」の解説に合わせて、向いている人の特徴もまとめました。
企業として適切なトレーナーを選出できるよう、是非とも参考にしてください。
OJTとは
OJTとは「On The Job Training」の略となり、上司が部下に対して、座学やロールプレイングではなく、実践を通して業務知識を教える教育手法となります。
令和になってからは、約6割以上もの企業がOJTを導入していると言われており、実施することの重要性や効果的な教育手法だと読み取れます。
職場環境に慣れさせたい、教育の効率化を図りたい、OJTの実施はこのような時に効果的でしょう。
OJTを行う目的
OJTでは、トレーナーとなる上司が部下一人一人に対して実際の現場での業務を通しながら教育を行います。
誰しも働き始めるまでは、緊張したり、不安を感じてしまうものですがOJTはこのような悩みを解消できるメリットがあり、現場に入ったら即戦力として働ける社員を育成する目的があります。
また、人に教える・教えられることによって、新入社員だけでなくトレーナーも業務への知識をよりいっそう深めれるポイントもOJTを実施する大きな目的と言えるでしょう。
OJTトレーナーに向いてない人の特徴
教える側の立場となるOJTトレーナーは、新入社員の今後に大きな影響を与える存在となりますので、教育係として重要な役割を担っていると言えます。
業務知識が豊富、業績がトップクラスの社員がOJTトレーナーになれば良いと思われがちですが決してそういう訳ではありません。
OJTトレーナーに向いてない人の特徴を下記にまとめましたので参考にしてください。
□OJTトレーナーに向いてない人の特徴
- 主観的にしか物事を考えられない
- コミュニケーションを取るのが苦手
- 分からなくなった時に聞いてスタイル
- OJTの目的や意味を理解出来ていない
主観的にしか物事を考えられない
仕事に対する取り組み方を「~べき」と決めつけている考え方の人間は、自分の考えを押し付けてしまったり、仕事を覚えるペースも自分自身を基準にしてしまうため、無意識のうちに新入社員へと大きなストレスを与えてしまう可能性があります。
このような主観的にしか物事を見れない社員はOJTトレーナーには向いてません。
業務の覚え方や、身につける速さは人それぞれだと理解した上で、新入社員の強みや弱みを見極めながら指導を行う能力が求められます。
コミュニケーションを取るのが苦手
新入社員に仕事内容を教えるのは簡単なことですが、しっかりと理解させるのは簡単なことではありません。また、新入社員は何が分からなくて困っているのか、最終的に理解できたのかOJTトレーナーは見定める必要があります。
上記の問題を解決するにはコミュニケーション能力が必須となり、新入社員と業務中・業務外など適度なコミュニケーションを図ることで「信頼を得る」ことができ、「悩みや問題点」を打ち明けてくれるようになるのです。
頭ごなしに怒鳴る指導や、思いやりのない接し方、ネチネチと嫌味ったらしく喋ってしまう。
このような指導を行ってしまうと、新入社員は分からないことも分からないままにしてしまうようになり、最悪の場合は過度なストレスで退職してしまう可能性もあります。
分からなくなった時に聞いてスタイル
教えるのが面倒くさい、なにを教えればいいのか分からない。このように考えている人は「分からなくなったら聞いて!」「自分の働いてる所を見て勝手に学んで」と投げやりな指導を行ってしまいます。
新入社員からすれば、何も分からないまま現場でいきなり働かされるなんて不安でしかありせん。
OJTは職場環境に慣れさせるための教育手法にも関わらず、上記のように面倒も見ず、投げやりな指導をするOJTトレーナーは、新入社員へと大きなストレスや恐怖心を与えるだけな最低な存在と言えるでしょう。
OJTの目的や意味を理解出来ていない
OJTをただの研修と考えている人や、何のためにOJTを実施しているのか目的を理解できていない人はトレーナーとして失格です。
いきなり現場で働く不安を取り除くため、そして座学では体験できない経験を得るためにOJTの実施は期待されているにも関わらず
新入社員にめちゃくちゃプレッシャーを掛けて不安を煽ったり、研修中に現場では、教えもしない・助けもしない、コミュニケーションも取ろうとしない。
ただ現場に立たせればいいや。
このように浅はかな考えでOJTを実施しているダメダメトレーナーも珍しくありません。
トレーナーを選出する企業としても積極的に「OJT研修の目的」に関する知識研修を行うなどして、ダメダメトレーナーを生み出さないよう対策する必要があるでしょう。
OJTトレーナーに向いてる人の特徴
仕事が出来ないと感じている人でも、OJTトレーナーに向いてる人の特徴に当てはまる項目が複数あれば人に物事を教える才能があるかもしれません。
OJTトレーナーに向いてる人の特徴を下記にまとめましたので参考にしてください。
□OJTトレーナーに向いてる人の特徴
- 自分自身の業務に余裕がある人
- アメとムチを上手く使いこなせる
- 知識・スキル・経験が豊富
自分自身の業務に余裕がある人
人に何かを教えるという行為は、予想以上に簡単な事ではありません。
ましてやOJTトレーナーとして企業から選ばれる際は、OJTトレーナーとして雇われるのではなく、今までの業務にプラスアルファでOJT業務を任せられる事例が一般的です。
分かりやすく言うと仕事が増えるだけ。
自分自身の業務で手一杯なのに、新入社員の面倒も見るなんで考えられませんよね。
業務に余裕があるだけで「どう指導すればいいのか」を考える時間があったり、付きっきりで新入社員をサポートも出来るので教えられる側も安心できます。
いくら指導が上手な人だったとしても、自分自身に余裕がない場合はOJTトレーナーを務めるのには無理があるでしょう。
アメとムチを上手く使いこなせる
OJTの目的として新入社員に自信を付けさせることも重要です。
頭ごなしに「ここがダメだった」「あのやり方は改善すべき」と厳しく指導するのは、相手が自信を失う結果に繋がったり、最悪の場合ストレスが溜まり辞めたいとまで考えてしまう可能性も。
良かった所はしっかりと褒めて、褒めた後に改善した方が言いポイントを付け加える。
もしくは、改善すべきポイントを伝えた後に良かった的をしっかりと伝える。
このようにアメ(褒め)とムチ(改善)を上手く使いこなせる人は、OJTトレーナーに向いていると言えるでしょう。
ムチといっても、新入社員を叱るという意味ではなく、客観的な視点から改善点を見つけて伝える行為と理解してください。
知識・スキル・経験が豊富
業務に関する「知識・スキル・経験」が豊富なことは、それだけでOJTトレーナーに向いていると言えます。
どのように業務へと取り組めば効率的に働けるのかや、イレギュラーの事例が発生した際の対応方法などは経験豊富な人ほど知識として身につけていますし、実際に体験しているからこそ具体的な指導が可能になります。
人間性の問題や、指導能力も必要になるため、知識が豊富だからと言ってOJTトレーナーに必ずしも適しているという訳ではありませんが、選出する際の大きなアドバンテージとなることは間違いはないでしょう。
OJT担当者の育成方法
せっかく優秀な社員が入社したとしても、OJTを行うトレーナーによっては「ダメ社員」に変化させてしまったり、過度なストレスを与えてしまいモチベーションの低下、最悪の場合は新入社員を退職させてしまう可能性もあります。
業務について学ぶのは、OJTを受ける新入社員となりますが、OJTを行う担当者にもしっかり指導方法を教育しておく必要があることを先ずは理解しておきましょう。
下記にOJT担当者の育成方法をまとめていますので参考にしてください。
□OJT担当者の育成方法
- OJTの基本手法「STDC」
OJTの基本手法「STDC」
STDCには2つの考え方がありますが、どちらもOJTトレーナーとして新入社員を育てるには参考になる知識となります。
1つ目の「STDC」は
- S・・・Show
- T・・・TELL
- D・・・Do
- C・・・Check
「Show」は実際に業務に取り組んでいる所を見せるという意味で、業務の具体的なイメージを持たせる役割を担います。
OJTの目的は実戦形式での学習となりますので、先ずはやって見せることが最も大切なプロセスと言えるでしょう。
「TELL」は業務内容の説明・解説をするという意味になります。
お手本を見せるだけでも効果はありますが、なぜ手順が決まっているのかや、どこを意識して業務に取り組んでいたのかなど「意図や背景」を含めて詳しく伝えることがポイントになります。
「Do」は新入社員に業務をやらせてみるプロセスとなります。
ここでは、ただ単に業務をやらせてみるのではなくOJTトレーナーが新入社員をしっかりと「観察」する事が求められます。
業務への取り組み方を観察しながら、改善すべき点や良かった点を記録しておくようにしましょう。
また、新入社員としても見てもらえていることが精神的な安心にも繋がりますので意識すべき項目となります。
「Check」は、Doのプロセスを元に評価したり、振り返りを行う項目となります。
ここではダメだった所を頭ごなしに伝えるのではなく、「良かった点」をしっかりと伝えた上で「改善すべき点」を伝えること。
Checkの目的はダメ出しをするためではなく、新入社員を成長させることにフォーカスする意識が重要です。
振り返りの後は、「またチャレンジしたい!」とモチベーションが高くなるような指導を行うことがOJTトレーナーには求められます。
2つ目の「STDC」は
- S・・・See
- T・・・Think
- D・・・Do
- C・・・Care
「See」は新入社員が業務に取り組んでいる姿をじっくりと観察して、良かった点や改善点を見つけていきます。
「Think」は、Seeを通して感じたポイント「良かった点は何故良かったと感じたのか」「悪かった点はどのように改善すべきか」を考えるプロセスとなります。
「Do」は実際にThinkで考えたことを実行するプロセスとなります。新入社員へとフィードバックを行い次回の業務に活かされるように指導を行いましょう。
「Care」はアナタの指導を通して新入社員がどのように変化したか動向を見守ることを指します。
ここからまた「See」に繋げることで、新入社員をより良く教育していくための「STDC」のサイクルが確立し、フレームワークとして自然と取り入れれるようになります。
まとめ
OJTトレーナーは「歴が長い人」「知識がある人」と言った観点から選出するのではなく、OJTトレーナーに向いてる人の特徴が当てはまる人材から選ぶようにしましょう。
向いていない人間を選んでしまうと、OJT研修を受ける新入社員に大きなストレスを与える可能性があったり、研修で仕事を覚えてもらうどころか現場入りする前に退職させてしまうリスクもあります。
これから一生懸命に働こうと意気込んでいる新入社員を、生かすも殺すも企業が適切なOJTトレーナーを選ぶことが出来るかに掛かっています。
今一度OJTトレーナーに「向いている人」「向いていない人」の特徴を確認していただき、これからの新入社員教育が円滑に進むよう活動を行っていきましょう。
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